こんにちは。
前回は回文の例をたくさん挙げて、回文の作り方で共通している考え方「関連ワード」について述べました。
今回は、その「関連ワード」は、韻においても面白い役割を担う、という話をさせていただきます。
今回ここで述べることには、賛否両論あると思います。
というのも、今回の記事は、一般的なラップの解説ではなく、僕が個人的に「こうするのが気持ちいい」と思っているテクニックやルールについて述べるだけだからです。
なので、ヒップホップやラップはすべてこうあるべき、と言っているわけではありませんのでご了承ください、と、あらかじめ言っておきますが、それでもdisられるのがヒップホップなんですけどね!(って言えば言うほどdisられるのがヒップホップなんですけどね)
さて、突然ですが、短歌における、掛詞や縁語をご存じでしょうか。
高校の古典の授業を思い出してみてください。
たとえば、在原業平の、以下の句。
から衣 きつつなれにし つましあれば はるばる来ぬる たびをしぞ思ふ
これが本題ではないので解説はさらっと流しますが、「都に残してきた妻を思う」という本線の裏で、「なれ」「つま」「はる」などは掛詞になっていて、「衣がなじむ」「裾の左右両端の部分」「張る」という、冒頭の「から衣」から連想される言葉の響きを散りばめているのです。
| 本線 | 裏ライン | |
| なれ | (妻と)慣れ親しんだ | (衣が)なじむ |
| つま | 妻 | 褄(衣の裾の左右両端の部分) |
| はるばる | (妻を残して)遥々 | (衣が)張る |
このように、「慣れ親しんだ妻を置いて遥々来ちゃったよー」ということを表では言いながら、その裏で「から衣」に関するワードのサブリミナル効果!
(こんな適当な古典の解説サイトはそうないと思います。ごめんなさいね)
今のが掛詞と縁語の解説でしたが、これ以外にもこの歌には修辞法が満載(たとえば頭文字取ったら「かきつばた」になるなど)で、在原業平は言葉遊びの天才過ぎてもし現代でラップをやっていたらMC業平どんだけリスペクトされんだよって感じなのですが、とにかくここで言いたいのは、
「裏ラインで別のストーリーを語ると、言葉に奥ゆきが出る」
ということです。
そして、これがラップにも当てはまり、このときにキーになってくるのが前回回文を考えるときのコツとしてあげた「関連ワード」なのです。
せっかくなので、今回の回文シリーズを書くきっかけをくれた久野くん(詳細は前回の記事)が歌詞に登場する、「Beagloove is Back!」という曲で解説させてください。
【歌詞】 「Beagloove is Back!」 細川担当ヴァースの後半を抜粋(1:50あたりから)
(確実な道)
(博打打ったり)
applimばりにAvril Lavigne
ライカ “Sk8er Boi”
いやすげぇ多忙だし
やっぱ滑ったもん勝ち
じゃあ久野は乗るケッタ・マシーン
他のスタッフはメタモンばりに
変幻自在なら経験値大では
ないけどナイスな連携次第
審査員は極上で
サンシャインは牧場が
特徴だ
さぁとくと見な
じゃあ僕と皆で
グラスで乾杯
楽ではない
学生団体
※今から僕は、【自分で書いた歌詞を自分で解説する】という、ミュージシャンとして非常にかっこ悪いことをします。なぜこんなことが可能かというと、僕はミュージシャンではなく、「ただ韻を広めたいだけの人」だからです。
※この断りは、毎回入れます。(5回目!)
僕が去年運営スタッフをやっていたapplimというビジネスコンテストについてラップしています。
ちょうど昨日、applimのフィードバックイベントに参加してきました(今年はメンターとして参加しています)。
この曲は去年、学生として運営スタッフをやっているときに作ったものです。懐かしい。
で、まぁこの曲の韻は良質なのかと言うと、意味のつながりを無視して韻を踏んで音を楽しんでいる感があるので評価は分かれるか気がするのですが、その中で、僕が忠実に守っているルールがあるので、それを解説させてください。
まず、このラップで僕が言いたいのは、
「applimの運営は多忙だけど、確実な道でも博打打つような、滑ったもん勝ちぐらいの気合いで行かないとダメ。代表の久野を筆頭に、スタッフは皆学生で経験は少ないけど、変幻自在の連携プレーで乗り切ろう」
といったところですね。
(本当に立ち上げ当初はこんなギリギリの感じで動いていました)
歌詞の話に戻りますが、上の部分を聴くと、次のように言う人が出てくるかと思います。
「Avril Lavigneは、文意関係ねーじゃん!韻に捕らわれ過ぎて無理やり出し過ぎだろ!」
実際ラップのこういう側面が嫌いな人も多いと思います。
韻を踏むことに固執し過ぎて意味のない単語を出してしまい、結果として言いたいことが言えなくなってしまう、まぁ英語でいうとポイズンですね。
その気持ちはよくわかります。
でも僕はこういう「一見関係なさそうな言葉」を使うとき、ひとつルールを決めています。
そしてこのルールさえ守れば、韻を踏むために意味のない言葉をいきなり出すことは、むしろリリックの世界観を深めることになるとさえ思っています。
そのルールとは、
「脱線しても、そっち側の文脈の韻で、意味を付加して元の文意に戻ってきたらセーフ」
というものです。
これが、上に例で出した在原業平の歌にもつながる「関連ワードによる奥深さ」を実現させています。
具体的に説明させてください。
まず、「確実な道」「博打打ったり」の流れで、「applimばり」で韻を踏みます。
これにより、「今からapplimの話をするよー」とアピールしたところで、一旦「Avril Lavigne」を出して遊びます。
はい、ここで「関連ワード」、Avril Lavigneの代表曲である、「Sk8er Boi」という言葉を出します。
ここまでは脱線です。
そして、この「Sk8er Boi」を踏まえつつこの韻で本線に戻れば、それはセーフ、というのが上で述べた僕のルールなのです。
よって、「Sk8er Boi」から「すげぇ多忙だし」というapplimの話にすばやく戻す。
ここで重要なのは、Sk8er Boiという言葉をここで使ったことにより、後に出す言葉に深みが出る、ということです。
「滑ったもん勝ち」は先ほど述べたように「団体が大スベリしてもいいぐらいの攻めの姿勢で」ということ(あと久野くんが代表挨拶でたまに滑るということ)を意味しているのですが、この「滑る」という表現は、さっきの「Sk8er boi」を踏まえています。
スケーターのように滑れ、と。
その次に出てくる「ケッタ・マシーン」はご存じのとおり、名古屋弁(久野の出身は名古屋)で「自転車」の意味ですが、先ほど出した「Sk8er」という言葉との対比です。
スケーターボーイはスケーターに乗るけど、うちの代表の久野はケッタ・マシーンに乗るよ、と。
そして他のスタッフはそれに捕まって一致団結して進むよ、と。
このようにして、さっき”Avril Lavigne”で脱線したことが効いてきます。
このヴァースで何よりも表現したかったのは「スタッフが不安定ながらもみんなで力を合わせていく様子」だったのですが、それを「代表の久野が自転車をこいで、それにみんなで乗り込んで進む」と例えるのがピッタリで、これは「スケーター」という伏線を張ったからこそ、深みが出ます。
| 本線(applim) | 脱線(Avril Lavigne) | |
| 確実な道 | ||
| ↓ ↓ ↓ | ||
| 博打打ったり | ||
| ↓ ↓ ↓ | ||
| applimばり | → | Avril Lavigne |
| ↓ ↓ ↓(韻はここで変える) | ||
| すげぇ多忙だし | ← | Sk8er Boi (「滑る、乗り物」という意味を付加) |
| ↓ ↓ ↓ | ||
| 滑ったもん勝ち (Sk8er Boiから得た「滑る」感) |
||
| ↓ ↓ ↓ | ||
| ケッタ・マシーン (Sk8er Boiから得た「乗り物」感) |
||
| ↓ ↓ ↓ | ||
| メタモンばり |
以上が、僕が自分に課している、「脱線しても、そっち側の文脈の韻で、意味を付加して元の文意に戻ってきたらセーフ」というルールの説明でした。
薄々お気づきかとは思いますが、韻というのは、かなり自己満足的要素があります。
そして、もちろんそれは認めます。
だって、みんな自己満足的に書き過ぎて、僕はもはや自分で書いた歌詞しか解説できませんもん。
どれだけ聴きこんでいる曲でも、ここまで深くはリリックに込めた意味を汲み取れないし、そもそもBeaglooveのこの曲だって、自分以外の2人の担当部分を解説する自信さえ皆無ですからね(衝撃の事実)。
たとえば、僕はサッカーに詳しくないので、この曲の最初の田中くんのヴァースの「むさぼるスシ」とか、ググって初めて意味知りましたもん。
だから毎回、自分で自分の書いた歌詞で解説するという格好悪いことをしているのです。
というわけで、長くなりましたが、このapplim、去年は学生として運営をやっておりましたが、僕は社会人メンターとして参加しますので、参加者のみなさん、よろしくお願いします!
そして9/4の決勝レセプション(今年はビッグサイトらしい!)は一般観覧もある(詳細こちら)ようなので、もしご興味ある方は、是非遊びにきてみてください。
僕もいますので、お話しましょう。
今回は「回文と韻<後編>」としたのですが、しばらく更新しないうちに回文についてもうひとつ書きたいネタが思いついたので、次回はそれを書きます(というか今回回文の話ほとんどしてないし)。
それでは。